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【後編】人生の3大リスクに備える!公務員が知っておきたい「年金」の基礎知識

「将来のために資金づくりをしたいけど、何から手を付けていいのかわからない…」「資産運用したいけど、投資はちょっと怖い」…

元公務員で、現在は公務員専門のファイナンシャルプランナーとして活躍している岩崎大さんに、気になる「公務員のお金」について本企画。

今回は、ネガティブな印象を持つ人も多いであろう「年金」について執筆いただいた。

「公的年金の本質は保険」と岩崎さん。どういうことか、前後編に分けてお届けする。

※前編はこちら

公的年金の本質は保険

人生には、望ましくないことが予期せず起こる可能性があります。一般的に「リスク」と呼ばれるものですね。リスクに対処するための手段の1つとして、保険が存在します。適切な保険に入っておけば、万が一のリスクが降りかかった時に、壊滅的なダメージを負わなくて済みます。

ここで思い出してほしいのが、公的年金の掛金の呼び方です。覚えていますか?「保険料」と呼ぶのでしたね。この呼称が示しているのは、「公的年金は保険の一種」だということです。換言すると、「僕たちは保険料というコストを負担し、公的年金保険に加入することで、何らかのリスクに備えている」ということです。では、どんなリスクに備えているのでしょうか。

具体的には、次の3つです。

1、長生きリスク

2、障害リスク

3、死亡リスク

 

なお、法律(国民年金法、厚生年金保険法)でも、長生き→障害→死亡の順に規定されています。興味のある方は条文もお読みください。それでは、順番に解説していきます。

長生きリスクに対応する「老齢年金」

「長生き」と聞くと、なんだかおめでたいイメージが想起されますが、「長く生きれば生きるほど、老後の費用も増えていく」という切実な問題もあります。

そして、自分が何歳まで生きるのか、死の瞬間まで分かりません。平均寿命や平均余命という参考指標はあれど、最終的には神のみぞ知る世界です。何歳まで費用がかかるのか事前には分からないから「長生きリスク」というわけですね。

この長生きリスクを公的年金はカバーしてくれます。なぜなら、終身年金、つまり死ぬまで給付される年金だからです。具体的には「老齢年金」と呼ばれ、原則65歳から支給開始となります。「年金」と聞いて真っ先にイメージされるのは、この老齢年金でしょう。

もちろん、老齢年金が長生きリスクをどの程度カバーできるかどうかは、給付額や家族形態、生活水準など様々な要因の影響を受けます。そのため、自分での老後資金準備も大切です。

障害リスクに対応する「障害年金」

病気やけがで障害を負ってしまうリスクは、誰もが持っている人生の大きなリスクです。そんな障害リスクに対応するのが、「障害年金」です。

長生きリスクは老後特有のリスクなので、65歳から支給開始でも良いかもしれませんが、障害リスクとなるとそうも言ってられません。若くても障害を負う可能性はあります。

もしも30代で障害を負ってしまったときに、「障害年金の給付は65歳まで待ってくれ」なんて言われたら途方に暮れますよね。そのため、障害年金は「障害を負ったときから死ぬまで給付される」という特徴があります。

障害の状態・程度の審査や、保険料の納付要件などはありますが、万人が持つ障害リスクに一定程度は対応できるように設計されています。

死亡リスクに対応する「遺族年金」

家計を支える方が亡くなってしまった場合、遺族は「今後の生活費の捻出」という問題に直面します。それをカバーするのが、遺族が一定の年齢になるまで支給される「遺族年金」です。単身の方はあまり関係ないかもしれませんが、人生はどうなるか分かりません。今後、家庭を築くかもしれませんしね。

世界から公的年金が消えたなら…

ここまで見てきたように、公的年金は「長生き」「障害」「死亡」の3つのリスクに備える保険です。そしてこの保険は、現代を生きる僕たちにとって、とても重要な役割を果たしています。その重要度を知るために、もしも公的年金がなかったら…そんな世界を想像してみましょう。

その世界で生きる僕たちは、3つのリスクに対して、個人や家族で立ち向かわなければなりません。生活費は人それぞれですが、仮に月に15万円としましょうか。この場合、3つのリスクに対処するにはどれくらいの金額が必要になるのか、ざっくりと見てみましょう。

・長生きリスク…寿命を80歳とすると、65歳からの15年間で2,700万円。

・障害リスク…40歳で障害を負い、寿命を80歳とすると、40年間で7,200万円。

・死亡リスク…5歳の子どもを残して死亡した場合、子どもが18歳になるまでの13年間で2,340万円。

これらの金額を個人や家族で準備するとなると、なかなかハードな人生になりそうです。

公的年金がなかった時代、親の老後の面倒は子どもや子どもの妻が見ることが当たり前でした。時代の価値観といった社会的な側面だけでなく、旧民法上も、家長の同意なしに結婚することはできませんでした。法律でも縛られていたんですね。

そう考えると、結婚相手を自由に決める、家を出て就職する、気ままに一人暮らしをする、そんな現代では当たり前のような生き方の裏側に、公的年金の存在意義が浮かび上がって見えてくると思いませんか。

公務員専用の年金情報サイトとまとめ

最後に、地方公務員専用の年金情報サイトを紹介します。「地共済年金情報Webサイト」というサイトです。年金見込額の試算が可能で、「ねんきんネット」よりも更新が早いので、自治体職員の方は登録しておくことをオススメします。詳しくは公式サイトをご覧ください。将来の年金額の試算は、ライフプランを考える上でも重要です。

なにかとネガティブなイメージもある公的年金ですが、その役割が保険であることを知っておけば、上手に向き合っていけるのではないでしょうか。この記事が、年金制度への理解の助けとなれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 


岩崎 大(いわさき・だい)

公務員専門FP事務所代表。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFP®。

1984年生まれ。熊本県出身。自治体職員として、生活保護・地域おこし・防災・選管・児童福祉などの業務に携わる。在職中にFP資格を取得し、2017年に退職・独立。公務員世帯に特化した独立系FP事務所を運営中。

ブログやメルマガ、YouTubeなど各種メディアで「公務員にとって本当に役立つお金の知識や情報」を発信中。YouTubeチャンネル「公務員専門FP」はチャンネル登録者7,000名(2021年10月時点)。
 

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